技術大国“ニッポン”
プロローグ
30年ほど前の話であるが、テクノ・ポリス(高度技術集積都市)の指定で全国が盛り上がった。
我が宇都宮市でも市長を先頭に、通産省の指定を受けるべく奔走した。
幸いな事に宇都宮市はテクノ・ポリスの指定を受け、市内の清原工業団地(戦時中の陸軍飛行場跡)等には、高度技術を持つ企業が立地した。
その企業群は現在宇都宮市の税収に大きく寄与している。
宇都宮市のテクノ・ポリスとしての強みは、市内に既に下請け産業の基盤があったことである。
富士重工業(戦時中の中島飛行機)、シンガー日鋼(旧日本製鋼所=兵器工場)を中心とした生産技術のヒエラルキーが既に存在していた事である。
その一つに“クリーニング業”があった。
「極微細なごみ=ハイテク産業の大敵」をクリーニングする技術を持った業者まで存在したのである。
一口に、ハイテク技術・ハイテク製品と言っても、それを取り巻く多くの業種の多様な技術が有って成り立つのだと実感したのである。
話は飛ぶようであるが、米国海軍第7艦隊に関する記事があった。
来年2月から長期修理=横須賀の空母ジョージ・ワシントン―米海軍
12・31 時事通信
西太平洋で展開する米第7艦隊が海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)を母港にする原子力空母「ジョージ・ワシントン」に付いて、2013年2月から同基地で長期修理を実施する計画を進めている事が30日分った。6ヶ月以内に修理を終えることを目標にしている。
米海軍筋が明らかにした。期間中、運用は制限される。
米第7艦隊
米太平洋艦隊隷下の艦隊で、旗艦は強襲揚陸艦ブルーリッジ、
主力艦は原子力航空母艦ジョージ・ワシントンである。
基地は、母港、横須賀に加えて日本国内に佐世保・沖縄があり、韓国の釜山・浦項・鎮海とシンガポールにある。
米海軍唯一の前方展開している空母機動部隊とも言われる。
空母機動部隊
航空母艦を中心として、空母を護衛する駆逐艦や潜水艦を持って構成される部隊であり、本格的な運用は、我が日本帝国海軍と米国海軍しかなしえなかった。
現在は米海軍の独壇場である。
中国も“空母らしきもの”を就役させたようだが、空母機動部隊を運用するまでには至っていない。
前方展開
第7艦隊は前方「西太平洋海域」に展開している。
米国本土を母港とせず運用している点が「前方展開」と言われる由縁である。
「前方展開」を可能にさせているのは、我が日本の蓄積された技術群であると
石原慎太郎氏が「NOと言える日本」で言っていた。
長期修理
大修理であっても、母国に帰らず日本(横須賀)で行えると言う事は、
石原慎太郎氏の指摘が全く正しかった事を証明している。
先端技術から、ローテクであっても極めて高度な職人技を必要とするものまで、必要なすべての技術が存在するのはわが国以外にないといっても過言ではない。
米国にとって、我が日本国が掛替えのない存在であるとの証明でもある。
護衛艦
海上自衛隊の軍艦は「護衛艦」と呼称される。何を護衛するのか?と問われれば、資源を海外からに輸入に頼るわが国であるから、有事(戦時)の際には、輸送船団を護衛するともいえるが、日米の関係からすれば第7艦隊と共同して空母ジョージ・ワシントンを“護衛する”としか思えない。
エピローグ
仮に、日本に第7艦隊の艦艇の修理をする技術の蓄積がなかったとしよう。
他の空母機動部隊と同様母国で原子力空母の定期点検・修理をするためには、
往復するに6ヶ月、修理に6ヶ月、1年の時間を要する事は素人でも分る。
第7艦隊が1年間も西太平洋における軍事的プレゼンスを空白にすることになる。
米国が西太平洋に対し極東アジアに対し影響力を維持しようとすれば、米第7艦隊規模の艦隊を1セット増やさなければならない、太平洋の広さの故である。
原子力空母ジョージ・ワシントンを横須賀で修理できると言う事は、技術大国・日本の存在が、米国にとって空母機動部隊1セット分の価値があるということである。
加えて言えば、
旧ソ連も、英国やフランスも空母機動部隊を持てない。持てなかった理由は空母機動部隊編成には天文学的な費用が必要であり、維持費のみでも多大な負担を要するためであるとも言われている。